彼女があらわれるのは
決まって僕が風邪を引いたときでした

彼女は天井から
ゆったりとした水色のローブを いっぱいに広げながら
ゆっくりと 鳥のように
僕の隣に舞い降りるのでした

仰向けで寝ている僕の額に
彼女はそっと手を触れると
優しく額にキスをするのでした

そして 彼女は 途方もなく大きな数字を
僕につぶやくのでした

彼女の声は
やっと聞こえるくらいの小さなささやきだけど とっても冷たく 威圧感があって
彼女のささやく 大きな数字は
巨大なイメージとして 僕に容赦なく襲いかかるのでした

そのイメージは 運命のつながりとか 神の意思とか
そういうものを連想させて
幼い僕は 果てしなく続く広がりに
押しつぶされそうになりました

僕が 手に余る大きな広がりと格闘している間に
彼女はいつの間にか いなくなっているのでした

そんなことが何度かあって
でも 僕が大きくなると
彼女はあらわれなくなりました

彼女がどうしてあらわれたのか
彼女が何者なのか
僕にはわかりません

ただ 彼女は僕に 自分の手には負えない大きな何かが存在することを
教えてくれたのです

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